抗VEGF(血管内皮増殖因子)薬の硝子体注射とは?
硝子体注射とは、眼球内の硝子体と呼ばれる部分に薬剤を直接注射する治療法です。治療は消毒と点眼薬で麻酔を行い、その後、白眼部分から細い針を刺して薬剤を硝子体に注射します。使用する薬剤は抗VEGF薬という血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑制し、新生血管の増殖や成長を抑える薬です。
治療は定期的に行われ、一般的に1〜3ヶ月程度効果が持続し、効果が切れるタイミングに合わせて注射治療を行います。初期は毎月の注射が必要な場合もあります。
どういう疾患が対象か
糖尿病黄斑浮腫
糖尿病によって網膜の血管が障害を受け、網膜の中心部にある黄斑部分にむくみが生じる病気です。視力低下や変視症を引きおこすことがあります。
加齢黄斑変性
加齢によって網膜の中心部にある黄斑部分に未熟な血管である新生血管が形成され出血やむくみが生じる病気です。
高齢になるほど発症リスクが高くなり、視力低下や失明を引きおこすことがあります。
網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
高血圧や動脈硬化などによって網膜の静脈が詰まり、未熟な血管である新生血管が形成されむくみが生じる病気です。
視力低下や変視症を引きおこすことがあります。
他にも近視性脈絡膜新生血管や血管新生緑内障などの疾患も対象です。
治療方法
消毒と点眼麻酔後、注射によって眼球内の硝子体への薬剤(抗VEGF薬)を注射します。(5分程度)
使用薬剤と費用
現在日本で認可されている硝子体注射用抗VEGF薬剤はアイリーア、ルセンティス、ラニビズマブBS、バビースモ、ベオビュの5種類です。
当院の抗VEGF薬硝子体注射には症状や効果によって主に3種類の薬剤を使い分けていきます。(2025年8月時点)
アイリーア
糖尿病網膜症や加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞などに効果が期待できます。
1割負担の方:約15,000円・2割負担の方(高齢):約18,000円・3割負担の方:約45,000円
ルセンティス
糖尿病網膜症や加網膜静脈閉塞、脈絡膜新生血管などに効果が期待できます。
1割負担の方:約12,000円・2割負担の方(高齢):約18,000円・3割負担の方:約36,000円
ラニビズマブBS
ルセンティスの後発品で価格が安い。
1割負担の方:約8,500円・2割負担の方:約17,000円・3割負担の方:約26,000円
※効果の出方によっては治療途中で薬剤の種類を変更することもあります。
事前に必要な検査
視力・眼圧・散瞳検査・OCT(約1時間)
検査当日は車の運転を避け、公共交通機関やご家族の送迎を利用してください
準備〜治療後の流れ
3日前〜前日:抗生剤の点眼を治療する目に1日3回点眼する
当日:(待合室にて)体調と体温の確認後、治療眼に散瞳薬を点眼+OCT撮影検査(約30分)
↓
(手術室にて)消毒と点眼麻酔後硝子体注射(約5分)※通常治療後眼帯をします
↓
(待合室にて)今後の説明とお会計 <合計で一時間ほど> ※車の運転NG
翌日:AM10:00来院 視力・眼圧・治療眼の散瞳検査・OCT撮影検査(約1時間) ※車の運転NG
以降:次回の硝子体注射 もしくは 必要時経過観察にて診療
当日以降の注意事項
・眼帯は翌日の診察まで外さないでください。(診察後、眼帯無しになります)
・注射翌日〜3日後まで抗生剤の点眼薬を1日3回点してください。

シャワー・入浴……
当日から首から下のシャワーのみ可、翌日から首から下だけの入浴可、3日目から洗顔洗髪可
タバコ・飲酒……
当日の喫煙と飲酒は控えてください。

・注射後、異物感や目の赤みが生じることがありますが、通常は数日で治ります
よくあるご質問
- 硝子体注射は痛いですか?
- 硝子体注射は眼内に直接薬剤を注入する治療ですが、痛みをほとんど感じません。治療前に点眼麻酔を行い、注射も細い針で行います。注射時には針が入る感覚を感じることはありますが、大きな痛みをともなうことはありません。
- 硝子体注射に合併症(副作用)の可能性はありますか?
- 全身性の副作用として脳卒中・心筋梗塞が報告されています。
そのため、脳や心臓に疾患がある場合、投与できない可能性があります。
局所(眼)的な副作用として眼圧上昇、眼痛、出血、感染(眼内炎)、白内障や網膜剥離などがあるため、経過観察や適切な処置が重要です。 - 硝子体注射を受ける際に気をつけることはありますか?
- 感染性のリスクを避けるために注射前後は眼の清潔を保ち、抗生剤の点眼を忘れないようにしましょう。注射同日と翌日の洗顔洗髪は控え、汚れなどが目の中に入らないように気をつけましょう。
また、注射当日の飲酒と運動は控えてください。